「自分が本当に嫌になっていることは何か」それを突き詰めよと身体は時に訴える【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第39回
【心身ともに傷つくことを避けては通れない理由】
このように憎むべきもののようにつらつらと綴っているが、実は時々訪れるこの不調を愛しく思っている私もいるのだ。あるときに気がついたのだ。この不調のような私の身体が発するサインは「休め」よりも「もっと人生を突き詰めろ」「自分ですら気がついていない何かを探せ」の意味合いが強いということに。
この話をすると全員に「馬鹿なの?」と真顔で返されるが、私の場合はゆるゆると休めば休むほど、その変わらない現状に苛立ちを覚えてしまうのだ。その生まれた不満を跳ね返そうとあれこれ試行錯誤していくうちに、本当の答えとやるべきことが見えてくるのが常である。最終的な結論を出し、全ての不調を跳ね除けるまでの過程はひどいものだ。見えていない真実が自分にとって重大であればあるほど、その期間は長引き、心身ともに傷つくことを避けては通れない。
しかしながらその道筋で流れ出したもの全てが巡り巡って自分の血肉となり、暗闇を抜けた後の自分自身は少しだけ強い存在になっているのを実感してきた。それが分かっているから身体から発せられたものを見て見ぬ振りをして、気休めにしかならない甘い蜜を吸わせることはしないと心に決めている。
まだ不調からは抜けきっていない。たまに感情に陰りを感じる瞬間もある。ただそれが裏返った瞬間にどんなものに変化するかを知っているので、どんなに暗い森の中を歩かせられようと怖さはないのだ。それをこれまでの自分が教えてくれた。
明日も明後日もずっと自分だけを見つめている。
この時間から抜け出したとき、どんな私が待っているのだろうか。それが何よりの楽しみだ。
(第40回へつづく)
文:神野藍
※毎週金曜日、午前8時に配信予定
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